「飯エッセイ」プロローグ:上司にランチに誘われる
- Takachi Nobuyuki
- 2017年5月15日
- 読了時間: 2分
3月11日 午前11時45分、上司にランチに誘われた。
僕は「はぁ」とため息をつきたくなった。めんどくさい。
こんな時はっきりと
「悪いんだけど今日はパスしていいかな?」
「昼休みは豊かで恵まれていて、上手く説明できないけど、なんだか救われてなきゃならないんだ」。
とはっきり言い返せれば苦労はない。
それでも僕が上司の誘いを断れなかった理由は、
其の一、
僕が和を尊ぶ精神をこじらせすぎた、いわゆる「ノーと言えない日本人」であり、
其の二、
いち社畜に成り下がっている為。
以上2点です。
かくして僕は、上司とランチをご一緒させて頂くに至ったのである。
「昨年まで、我が部署の月間契約実行数は平均175件だった」
「だが、俺が赴任してからというもの、ほぼ毎月200件超えだ」
「これらを勘案し、来年度の予算は…」
僕はまた「はぁ」とため息をつきたくなった。
なにも昼休みまで仕事の話をする必要などないじゃないか……。
「我が部署の月間契約実行数」と「それを勘案した上で考える来年度の予算」は、昼休みに豊かさと恵みと救いを求める者にとって、最も不適切な話題だ。
あるいは、ひょっとしたら彼だってそんな話はしたくないのかもしれない。
僕との間に共通項を見いだせないから、仕方なく当たり障りの無い仕事の話をしている可能性だってある。
だが、それはどちらでもいいことだ。
やはり僕は、勇気を持ってランチの誘いを断るべきだったのだ。
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