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西の空に朝日を求めて。前編:ジャカルタ発、深夜特急でゆく

  • 執筆者の写真: Takachi Nobuyuki
    Takachi Nobuyuki
  • 2017年5月21日
  • 読了時間: 2分

ジャカルタ発、深夜特急でゆく

2017年4月29日23時13分、列車は定刻通りタナアバン駅を出発した。

今回のエクスカーションの目的は、ジャワ島西端ムラックの海辺から朝日を撮る事である。

ムラック到着の予定時刻は深夜2時半。朝日を拝むには早すぎるが、列車はこの1本しか出ていない。

国産ディーゼル車の客入りは疎らで、 4人用のボックス席をひとりで占有する事が出来た。2人掛けの長椅子にゆったりと腰掛け、靴を脱ぎ向かい側の席に足を伸ばす。窓辺に取り付けられたテーブルには空になったミネラルウォーターのペットボトルが2本置きっぱなしになっていたが、それ以外は概ね綺麗で、逆に物足りなさ感じさせた。

僕はインドのエアコン無し寝台車に乗り込み、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる種類のニンゲンだ。

旅の列車は汚く暑苦しくて、砂埃にまみれるほど旅情を掻き立てられる。

貧乏旅行に味をしめた人なら、この感じ、ご理解いただけると思う。

検札のあと、鉄の軋みに身を任せて浅い眠りについた。

「お兄さん、終点ですよ」

午前3時半ごろ、乗務員に促され目が覚めた。乗客は僕以外ひとりも残っていなかった。定刻通り列車が到着していたなら1時間寝過ごしたことになる。

覚醒しきっていない体を重々しく立ち上げ列車を降りる。ムラック駅はフェリー乗り場と連結されており、真夜中だというのにスンダ海峡を挟んだスマトラ島へ向う人びとで混み合っていた。

駅舎を後にした僕は、朝日を撮るのに適した海岸を探すべくグーグルマップを開き、

そして衝撃の事実に気が付いた。

そう、ムラックの海は西に面しているのだ。

島の西端に来たのだから至極当然のことなのだが、今の今までそんなこと考えすらしなかった。

日は東にのぼり、西へ没する。それは動かし様もない宇宙の真理である。

気まぐれな神様がまるで机の上の地球儀でも回すみたいに自転の向きを変えない限り、西の空に朝日がのぼる事などありえないのだ。

だが、僕はこれまで「行けばなんとかなる」の精神でアジアを旅してきた。

インドで入院した時だって、パキスタンで軍に拘束された時だって、イランから強制送還された時だってなんとかなったのだ。今回だってなんとかなる。

そして閃いた、

フェリーに乗ればいいじゃないか!

ムラックから向かい側のスマトラ島へ向うフェリーに乗り込めば、東を背に進む事になる。タイミングさえ重なればスンダ海峡に日が昇り、燦々と照らし出されるジャワ島を眺める事ができるはずだ。

目的変更!かくして僕は、スンダ海峡横断を決意するに至ったのである。

つづく


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