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西の空に朝日を求めて。後編:横断!スンダ海峡

  • 執筆者の写真: Takachi Nobuyuki
    Takachi Nobuyuki
  • 2017年5月26日
  • 読了時間: 2分

前編

横断!スンダ海峡

スンダ海峡は眠らない。

ジャワとスマトラをつなぐフェリーが24時間ピストン運行し、ヒトとモノが絶えず往来する。物資満載のトラックが次々とやってきては待機の列を成す。順々にフェリーの腹に納められ、海を渡るのだ。

僕が乗ったフェリーは「おおさど丸」という日本の中古船であった。スマートフォンで調べてみると、この船は26年間にわたり佐渡—両津間を運行。インドネシアにやってきたのは2014年との事だった。壁には佐渡の観光ポスターが当時のまま貼られている。

4時半ごろ、汽笛を鳴らしながらおおさど丸はのろのろ始動した。

夜の闇のなか、港の光だけがあやしく輝く。

僕は別途6千ルピアの追加料金を払い、雑魚寝船室に入った。深夜番組「水曜どうでしょう」で、大泉洋が同じ様な雑魚寝船室に乗っていたのを思い出す。甲板でずっと潮風に吹かれていてもよかったのだが(その方が旅情を掻き立てられる)、いちどフェリーの雑魚寝船室というやつに乗ってみたかったのだ。

雑魚寝船室はエアコンが効いており、快適さのあまり朝日を寝過ごしてしまいそうだったので早々に退出。

デッキに出るとムラック港の光は遠ざかり、イスラム帽をかぶった初老の男が離れゆくジャワ島を眺めていた。

その哀愁漂う後ろ姿は「ジャワよさらば!」と語りかけている様であった。

上甲板に上がり、その時を待つ。

黒と濃紺のグラデーションに染まった夜の闇を押し上げる様に、淡いオレンジ色の空が東の彼方に顔を覗かせつつあった 。 港の灯はより明るい陽の光に掻き消され、ジャワ島のフォルムが際立ってゆく。

やがて水平線から真円の朝日が昇ると、まばゆい光が一気に拡散され、 紺色の空との間に乳白色の空間を作りながら混淆していった。

おおさど丸は朝7時、無事スマトラ島バカウニ港に到着した。

スンダ海峡の夜が明けて、変わらぬ日常が今日も繰り返される。


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